ジールの導入プロジェクトの事例を紹介させていただきます。
1. 某製造業様の課題・背景
予算業務の属人化
・毎月の実績データを手作業で抽出・加工しており、報告までに膨大な時間とコストが掛かる。
・データ加工(配賦処理を含む)などの手作業に多くの負荷。
・入力ミスなどのデータ正確性の問題。
Excelファイルによる入力データの管理
煩雑なバージョン管理 、情報統制が取りづらいなど、Excel特有の課題
散在するデータソースの整備
各システムのデータ統合や、予算作成に必要なデータ粒度にするなど実績データが整備しきれていない。
スピーディーな業務分析
業務ごとに必要な視点での分析や刻々と変わる経営環境に対応するためのシミュレーションも行いたかったが、定型レポートだけで精いっぱいの状況
2.IPA導入前の業務イメージ
多少簡易的にしてますが、この事例のお客様のAs isの業務イメージです。
これまでの予算業務の流れです。
↓情報システム部で各業務システムから実績をCSVで抽出
↓経営企画部でCSVの加工と統合作業をほぼ手動で行い予実対比表を作成し
↓さらに営業・経理・人事などの各組織用に加工
↓各担当者へ送付
↓各部で入力の後
↓返ってきた予算を再度集計して
↓生産部門へ送付
↓生産部門で標準原価を算出
↓返ってきた予算集計し、レポートを作成。
理想としてはいろいろな角度で経営数値をみて見たかったのですが、毎月の実績の取り込みだけで多くの工数がかかっていたためレポート化するのは困難でした。
3. 提案内容
課題を整理するとこのように状況でした。
ゴールを以下とします。
- 業務の標準化
- 情報システム部や開発ベンダーではなく業務部門が主体となれるシステム環境
- ガバナンスが効き、整備された分析基盤となる環境
運用後の内製化という大きな目標もございましたので、ご提案させていただいたのがこのようなものです。
IBM社からは製品と公式トレーニングの提供を、ジールからはプロトタイプの作成とそのプロトタイプを基に実施する実践型トレーニングという内容を提案させていただきました。実践型トレーニングと言っても、実際はお客様と一緒にアジャイル方式の開発を進めていくというイメージに近い内容です。通常のアジャイル開発との違いは、最終的にスキルトランスファーを目的としておりますのであくまでユーザー様の開発をサポートしていくという役割を担ったという点です。
この導入方法によって、運用開始時にはお客様側で十分なスキルを持ち合わせた状況になりますので、我々のようなベンダーに頼らない運用が可能となります。
4. IPA導入後のイメージ
IPA導入後のイメージです。
まずは第一フェーズとして、データ整備と現行業務の省力化を目標に導入支援を開始いたしました。財務予算を一元管理するキューブと、従来から利用していた定型レポートを実装いたしました。主に、設計までを当社が担当し、弊社サポートのもと、お客様主体で実装を行っていただきました。データの整備の部分で苦労はありましたが、自動連携、キューブ化、既存帳票の再現まで実現できました。予算集計から定型レポートの作成までのプロセスにおける業務の省力化に貢献できました。
5. 今後の展望(実施中の後続開発)
今後はお客様サイドで、原価管理や、資産管理などの新しい業務管理用のキューブを追加し財務計画一元化を3か年ぐらいの継続計画で実現していく方針となっております。
6. お客様の選定理由
お客様も様々なツールを検討されましたが機能の充実、マルチキューブの有用性などが他のツールに比べて優勢でとご評価いただいております。
また、導入支援面においても、充実したトレーニングとスキトラ型の支援がお客さまの目的とする早期の自社運用へ効果が高いと評価いただき選定していたくことができました。
7. プロジェクト中の苦労
最後に、このプロジェクト中においての苦労点をお話させていただきます。
これまでの業務が属人化だったゆえに細かな業務要件の整理が大変だった。また、ユーザー様の想定よりも既存データの把握ができていないことが判明し要件定義フェーズが逼迫してしまった。
データの所在確認などは通常は要件定義フェーズで、明らかにしておきたいところですが、今回はアジャイル的な方法をとっておりましたし、システムの特性上、わかっている部分から進めてしまうという方法で上手く乗り切りました。
システム化後の目的としていた分析の要件がなかなか定まらなかった。
今まで実現できていなかったことを、急に要件化するというのはやはりどのお客さんでも出てくる課題ではあります。この点についてはトレーニングやPoCを繰り返すことでシステム化でできることのイメージをつかんでいただくことができたので徐々に具体化していただくことができました。今まさにユーザー様にて開発を進めていらっしゃるところだと思います。
プロジェクト期間中に、経営層からの分析要件の優先度が変わり・・・
こちらについては、それまでに開発中だったキューブをいったん保留して新たな分析軸とキューブを優先的に作っていくことで対応していきました。どの苦労点も、難易度が高い問題ではございましたがマルチキューブという構成がとれるIPAという製品だからこそ対応できた部分も大きかったです。
8.財務と業務の一体化
このユーザー様の例でもそうでしたが、マルチキューブというのはIPAやTM1が得意とするところで非常に有用な構成です。財務科目による管理を中心とした財務計画だけではなく販売計画や生産計画、人員計画に至るまで、それぞれ独立した視点での計画管理を行うことができその計画は全て財務計画に連動させることが可能です。また、個別にキューブを作成していけますのでまずは財務計画だけで運用するといったスモールスタートができるのもメリットです。運用を進めながら、販売計画や投資計画に広げていくなど、必要に応じて段階的に業務を拡大していくことが可能です。
参照「予算プランニング+経営アナリティクス」
Part.1 予算業務の一般的な課題
Part.2 IBM Planning Analyticsのご紹介
Part.3 ジール導入事例の紹介
Part.4 SPSS+IPA の先進事例
投稿者:Yuko Terasaki